学生時代、コンビニでアルバイトをしていました。
その店では夏になると、カキ氷のシロップによく似た味でシェイクのようなシャーベット状の食べ物を売りました。
味はメロン、イチゴ、オレンジ等という、まさにカキ氷のシロップと同じラインナップで、乾燥機のように回転して攪拌し、ソフトクリームの機械のようにレバーを引くとドロドローっとその食べ物が出てくる、といった専用の機械をレジの奥側に置いて、お客さんが注文するに応じて店員が紙コップに入れ、先がスプーン状になっているストローを差して渡す、というようなことをやっていました。
そのシャーベットに似た食べ物を「シャーピット」といいました。シャーベットじゃなく。
初めてそのシャーピットを扱う際、店長から説明を受けたのですが、この食べ物を1回も「シャーピット」と言わず、「これ」と表現して説明されました。
聞いてるワタシも「シャーピット」としてその食べ物を認識せずに「これ」という名で頭の中に刷り込まれたのでした。
シャーピットを製造販売する機械の側面に、その商品名が印刷されたポスターが貼られていたので名前が判りましたが、正直シャーピットって名前は、カッコつけたい年頃のワタシにはちょっと恥ずかしかったのでした。
店長も口にするには抵抗があったのだろうか、などと当時思ったものです。
口に出すのがはばかられるあのお方、ってハリー・ポッターのラスボスみたいですが。
シャーピットの購買層は小・中学生が殆どでしたが、彼らも購入する時はもじもじしながら「それください」とカウンターの向こうのグルグル回っている機械を指差すのでした。
なのでワタシは「あ、これね。」といって機械からシャーピットをひねり出してました。
ある時、小学生の女の子達がカウンターの前でシャーピットを見ながら話してました。
「あれ欲しいよね。」「うん、わたしも食べたーい。一緒に買お。」「うん。でもあれなんていうの?・・・シャーピットって書いてあるよ。」「シャーピット(笑)変な名前。」「(笑)あれ、シャーピットくださいって言えばいいの?」「シャーピットって書いてあるから、シャーピットじゃない?ねえ、どっちが先に言う?」「えーどうするー。」
しばしカウンター前でコソコソ話したあげく、一人の子が恥ずかしそうに
「あの(指差しながら)・・・シャーピットください」。
もう一人の子も
「私も・・・シャーピットください・・・」とカウンターに小銭を置く。
こんな健気で純真な子供たちのためにも、店員のワタシは全力で応えなければならない。
バイトだって使命感に燃える時がある。
胸に熱いものがこみ上げてくるのを感じながら、彼女達に言ってあげました。
「あぁ、これね。80円です。」
神様、お許しください。ワタシは客に恥をかかせるダメ店員でした・・・。
多分、彼女達はその時「『これ』で済むなら、シャーピットなんて言わせないでよ」と思ったに違いありません。
そして時は経ち、因果は巡る。
ワタシは客の立場で似たような経験をするのでした。(続く)
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