「昔の自分に会えるなら、あなたはどんな言葉をかけますか?」
よくある問いかけですが、昔の自分の考え方や感性をリアルに感じられるか否かで、その答えも違ってきます。
先日『タクシー・ドライバー』を観ました。
初めて観たのは21、22歳頃だったと思います。
観賞後、「コレは傑作!」と興奮していた記憶がありますが、何故か今回まで観直す機会が無かったのです(ワタシの中で常にDVDを購入したい作品に上位ランキングされていたにも拘らず、購入せずじまいでした)。
今回義弟からDVDを貰ったので再鑑賞。
これが初見の際とは、全く違う印象でビックリ!
初見の際は、孤独な男が絶望の彼岸で生き甲斐(死に場所)を見つけ、結果、世間から英雄視されてハッピーエンド、という話と解釈。
当時のワタシはそんな主人公にシンパシーすら覚え、自分を投影して酔っていました。うぅ、病んでます・・・。
当時のワタシはそんな主人公にシンパシーすら覚え、自分を投影して酔っていました。うぅ、病んでます・・・。
ところが今回、再び観てみると主人公は
・人の話を聞かない
・一方的な思い込みでロジックを組んで行動
・自分の事を顧みずに、他者を排除することで全てが解決すると思っている
等、まさにKYな人です。今やワタシが嫌いなタイプの人に映ったのが非常に面白かったです。
そしてハッピーエンドだと思っていたラストは、このような主人公が迎える当然の結末が、ちょっと先延ばしになったに過ぎないという暗示だと見ました。
このように本作を観ることで、図らずも過去の自分と対峙させられるという、貴重な経験をしました。
あー恥ずかしい。
とはいえ、本作が傑作であることには変わりありません。
KY男が、破滅的・破壊的行動で、誤って世間の英雄になってしまう皮肉を描いた、映画史に残る作品だと思います。
またDVDには、特典によくあるドキュメンタリーが入っていますが、こちらも非常に興味深かったです。
DVDの特典は大概、つまらないものが多いのですが、こちらは出演者・製作者の興味深い裏話やコメントで綴られ、退屈しませんでした。
ハーベイ・カイテルが演じたヒモの役は脚本では黒人の設定だった事実(つまり主人公が人種差別主義者であることをほのめかしていた)、リハーサルを重ねた上でアドリブを入れていくやり方(このくだりを観ていて気付いたのですが、こういう場面ではスコセッシ監督は演技を殺さないように過度にカメラを動かしたり、編集の手を入れたりせずにワンカットで撮っています。さすがです・・・)等、作品をまた違った観点から観ることの出来る格好のサブテキストになってます。
当時の自分に、今のワタシなら、なんというか。
「いやー、青いのぅ。」
ですかなぁ。
ですかなぁ。
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