先週末、マルス先輩と『ボーン・アルティメイタム』を観てきました。ご存知のとおり『ボーン・アイデンティティー』『ボーン・スプレマシー』に続くシリーズ3作目です。
原作はロバート・ラドラムの『暗殺者』を始めとする、ジェイソン・ボーンを主人公にした諸作品です。ワタシは高校時代に『暗殺者』を読みましたが、今となっては全く記憶に残ってなく、訳者あとがきに書かれた、本書が如何に面白い小説かを示すエピソードの方が記憶に残ってます。
その『暗殺者』が映画化されると聞いたとき、文庫にして上下巻の長さの話を映画にするいう点と、何よりもCG、爆発、二丁拳銃のスローモーション撃ち(もうジョン・ウー以外禁止にして欲しいです)が全盛の当時、これらの流行に迎合した薄っぺらな演出の凡作となることを危惧していた為、期待はしてませんでした。主演のマット・デイモンは原作のイメージとかけ離れた、若くナイーブなイメージでしたし、監督のダグ・リーマンは才能がある好きな監督でしたが、アクション映画は撮れるのか未知数というものありました。
しかし不安は全くの杞憂に終わりました。
『ボーン・アイデンティティー』はMTV風の演出や景気のいいラップなど入る余地も無く(素材に対してのアプローチの仕方の話で、MTV風演出やラップを否定しているのではありません)、原作のイメージ通りの曇天の空の下、主人公と殺し屋のプロフェッショナルな戦いが繰り広げられるクールな内容に「こんな映画が観たかったんだよ!」と喝采せずにいられませんでした。
痛快だったのは「もっと派手にしろ」との映画会社の要求に屈せず公開してヒット、シリーズ化が決定したことです。
2作目の『ボーン・スプレマシー』も監督こそ交代したものの、そのテイストは引き継がれ、特にクライマックスのカーチェイスは、今時のCG処理による1カットで見せる演出とは真逆な、細かいカットを繋げて見せる演出が功を奏し、観客の心拍数が上がるような近年稀に見る迫力です。
ラストも次作があることを匂わせているのですが、作品全体としてはシリーズものでよくある「中継ぎ」的なテンションの下降や、次作への下準備的な様子が全く無いのが素晴らしいです。
そして『ボーン・アルティメイタム』。
前作と密接に絡んだ構成で、あっと言わせる脚本がお見事です。
これだけエンターテイメントとして高質、且つチャレンジングな構成的仕掛けで完成度の高い脚本は、ちょっとすぐに思い出せません。
本作のカーチェイスも迫力。通常「避けながら走る」事によるスリルがカーチェイスの基本ですが、本作では「ぶつけて活路を見出す」様なスタイルで、「ぶつけてナンボ」とばかりに躊躇なくバックギアを入れる主人公が強く印象に残ります。
おかげで本作を観た帰り、マイカーを駐車場から出す際に周囲の車にぶつけながら走ろうとして、相変わらずの虚構と現実の狭間の無い自分を痛感しました。
ところで物語は3部作で終結するのでしょうか。いやいや、この周到な脚本は次作への伏線まで用意しているようです。
「暗殺者ジェイソン・ボーンになる前の主人公の物語」がまだ語られていません。この辺はロマンスと絡めて、もう一波乱ありうる描写をさりげなく挿入してます。
そして、ある登場人物の表情一つで、観客にカタルシスを与えるエンディングの心憎さよ!
シリーズを支持してきた観客に対する作り手からの粋なご挨拶にさえ感じました。
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